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オーサー本(2)読んだ [フィギュアスケート]

チームブライアン2 面白くて一気に読んだ[本]
前作と同じくすごく興味深い内容だったので
スケートファンなら読んで損なし

今までいろんな著者のスケート関連本読んだけどこのオーサー本が一番好き。
読む前はなんで平昌前に手の内を明かすようなことをしちゃうのだろうと
疑問だったけど、この本を読んでそれを手本にしようとしても1~2年では
手に入れられないだろうと。ユヅルとハビエルが築いてきたものはそう
簡単に超えられないと。

オーサーはコーチとしてだけじゃなく人としても本当に素晴らしくて立派だと
再認識したけど、この段階でのチームブライアンは、ユヅル(本書とおりのユヅル
呼びで)とハビエルという2人がいてこそなんだろうなぁ。普通のトップ選手同士
じゃこの関係は築けないだろうし、2人ともそれぞれ唯一無二の存在で、そういう
意味では残念ながら他の選手への参考にはならないかも。性格が真逆すぎるから
こそ凸と凹がピッタリ嵌るというか、、相手を尊重できたり人間的に優れている
ところは共通してて。前回の本にあったけど、ハビエルは練習を言わないときちん
とやらないのに対して、ユヅルはやりすぎるからやめさせて落ち着かせないといけ
なくて、ほんとに真逆でコーチも大変だなと。だからこそ互いの良いところと悪い
ところが手本になったり反面教師になったりして、相乗効果があったのだろう。
例えばソチ前から後半クワドを跳んでたハビエルが羽生くんの手本になったり、
自国開催の試合に慣れてる羽生くんが、バルセロナでのハビエルの重圧を支え
たり。

ハビエルが優勝した上海ワールドの後で、オーサーが苦悩していたことは、
この本で初めて知った。長年教えてきたハビエルも王者に導けたのだし大会では
2人にメダルを掛けてもらってうれしそうにしてたのに(表紙の写真)、シーズン
後は充実感よりも疲れきってしまっていたと。その理由の一つはユヅルの怪我や
病気との孤独な戦いをコーチとして支えきれなかったからと。羽生くんにとって
本当に激動の一年で、本人はもちろん応援してる方も苦しかったけどコーチもまた
違う視点からも苦しんでいたんだと。

ちょっと驚いたのはワールド前羽生くんがトロントに戻れなかった間、ハビエル
とオーサーは世界王者を目指さなかったということ。これは日本のファンに向け
ての表現なのかもしれないけれど、あくまでもユヅルのほうが実力が上だと言い
切ってしまっているのは、ハビエル側としてはどうなんだろうとも思った。
確かにハビエルが優勝しても「僕にとってはいつでも君が勝者」と羽生くんに
言ってたなぁ。以前13年ワールド前も羽生くんが捻挫して練習できなかった時に
ハビエルも一緒になって練習休んでたと聞いてなんで?と思った記憶。そんで
ハビエルマンのEX作ってたよね。それだけ羽生くんが練習のモチベーションに
なっているということなんだろうな。そういういろんな思いを知ってから見る
表紙の3人の笑顔は胸にグッとくるものがある。

チームブライアンはコミュニティでバランスが大事なんだということ。
スケートが上手くなること以前にスケートが好きであり続けること、
試合に勝つことよりもそこから何を学べたかということ。


クワド新時代、若い選手が4Lzや4Fを挑戦してくるのと、既にチャンピオンの
ユヅルが4Loを入れるのとでは全く意味合いが違うというオーサー。若手が
「成功者への切符」を手にするためにクワドの数を増やすのに対して、
羽生くんは「成功者への切符」のオプションとして「4Loの招待状」が届いたと。
この表現は面白い。「300点を出すには?」という問いの答えは、技術的な質の
高い演技でGOEとPCSを伸ばすということ。そしてGOEとPCSは連動している
ということ。


羽生くんのピーキングは短いサイクルでピークがくると。これはずっと見ている
ファンは気づいてたよね。試合に向けていいコンディションで臨んでいるんだ
けど、初日の公式練習が一番良くてフリーの日まで持たなかったり。以前オー
サーが羽生くんのことを「常に沸騰しているやかんのようだ」って言ってたこと
があったけど、常に気合いが入りすぎてて本当に必要な時にカラカラになってしま
っていることがあると。試合に向けての興奮や不安が身体の調子を上げさせざるを
えなくさせてしまって、試合前にフィジカルのピークが過ぎてしまうようなとこも
あった。若い時と違って、メンタルのためにフィジカルを酷使してしまわぬように
していかないといけない。



この前の本で羽生くんが「ブライアンは特別何かしてくれるコーチ」と言ってた。
「僕の考えを阻害しないように気を使いながらも、僕にとって一番いいフォーム
とか練習プランとかピーキングを探して確立してくれる。」と。ソチではオーサー
がリラックスしてる姿を見て自分もリラックスできたし、オーサーがすごく喜んで
くれた時に初めて金メダルが獲れてうれしいと思えたとも言ってた。

自立はしてるけれども手綱は握っていてほしいしプーさんも持っていてほしい、
オーサー以外にそんなコーチはなかなかいないと思う。
私が初めていいコーチだなと思ったのは、12年5月羽生くんが17歳で初めて
クリケットに行った時、たしかDaysに載ってたオーサーのインタで、金メダルの
ためでも誰かのためでもなく自分自身のためにスケートをしてほしいという言葉。
そのインタの中で、プレッシャーになってはいけないからと伏字になってる部分は、
「五輪連覇もできる」だよね。あれから5年経つけどもまったくブレてない。

オーサーがこれだけ生徒一人ひとりを尊重している理由の一つは、あのキムヨナ
との離別があるんじゃないかなと私は思っている。初めての教え子で一緒に成長
して五輪金メダルまで導いたのに、突然一方的な喧嘩別れみたいな形になって
しまって、オーサーのみならずクリケットのみんなが傷ついたようだから。
ウィルソンは未だに引き摺っているよね。オーサーとしては試合に勝って終わり
じゃなく生涯かけて関わりを持ちたいと思っているようで、先生と生徒も所詮
人と人との絆が大事なのだと。


自身が選手時代にプレッシャーに悩まされたからかもしれないけれど、
ファンの期待がユヅルの重圧になっているといつも危惧していると。
誰よりも試合に出たくて勝ちたいと思っているのは羽生くん本人なのだと思う
けど。もしかしたら、その期待を重圧に感じてるのは、他の誰でもなくオーサー
本人なんじゃないのかなとも思ったり。この若い才能を正しく導けているのか、
メディアの反応を気にしすぎているのはコーチのほうでは?とも思ったり。

元キムヨナのコーチでもあるし、以前は自国なのにアウェー状態だった羽生くん
を間近で見てたオーサーは、日本のファンに対してあまりいいイメージを持って
いないのかもしれないし、同時にファンの中にもずっとオーサーを良く思って
いない層がいるのも事実で。あ、あとなぜかホテルに押しかける追っかけに
対して寛大なのは不思議(笑)アジア人だからといって日本人ばかりではない
よね。

あと私が勝手に懸念してたのは、バンクーバーではキムヨナを、ソチで羽生くん
を五輪王者に導いたオーサーが、同じ選手を2度王者にするのと、新たに3人目
を王者にするのとなら、後者のほうがコーチとして名誉なことなんじゃないの
かなという不信?があったから。同じようにトップ2同士で同門だったダンスの
テッサスコットがソチ前にそんなようなことを感じてたと聞いたことがあるから。
だけど、この本が日本のファン向けに書かれているというのもあるかもだけど、
そういうのも杞憂かなと思えたかな。


あと本の感想とはぜんぜん違うけどついでに書いちゃうと、私が昔勝手に思っ
ていたことは、もしかしたら羽生くんは平昌前にクリケットを離れてコーチなし
で五輪に挑むんじゃないかなという妄想。あれだけ頭が良くて自分で戦略を錬れる
羽生くんに、コーチは必要ないんじゃないかなと、韓国の五輪なら日本拠点のほう
が便利だしチームより個人のほうが自由が利くし利点も多いかと思って。

しかしソチからの4年は、事故や怪我で思いのほか順調にいかなくて、2年連続
ワールドは銀だったことも、クリケットの環境を必要とする結果になったかなとも。
もちろんずっと前から羽生くん本人は平昌を見据えてクリケットにいると言って
たのは知ってたしあくまでもただの妄想だったけど。


戦略練るのは上手くても手綱を握る人はやっぱり必要。そしてここまでハビエル
と絶妙にいい関係を維持し続けられるとも思ってなかった。そう思うと、いい
ことだけじゃなく上手くいかなかったことも、決してマイナスだけじゃなかった
とも思える。オーサーの手綱さばきやクリケットの環境が、才能の塊の羽生くんを
どれだけ高めていることか。
進路のこともちょっと触れてたけど、私個人的にはGOE+5が見たいし新ルールに
なってからの演技も見たいし、同年代もやっと同じ舞台に上がってきてくれたし
羽生くんには平昌後ももう少しだけ競技を続けてほしいと思ってる。


本の感想のつもりが長くなってしまったけど、羽生くんのコーチがオーサー
だったおかげで、私たちもそのスケート理論に触れられて、羽生くんを通して
スケートの素晴らしさや成長の過程を見ることができて本当にうれしい。
オーサーの理念をベースに羽生くんの情熱が上手く作用して、最高の瞬間を
平昌で迎えられますように。
何よりも今この瞬間、クリケットの暖かくも刺激的な環境の中でスケートが
できていること、その演技を見せてもらえることができることがどんなに
素晴らしく幸せなことなのかと噛みしめています。